今回はCADを使いこなす技術的なレベルについて考えたいと思います。簡単に言えば「出来るってどのレベルから言えるのか?」です。

私は今までオートキャド(AutoCAD)を使って様々な種類の、そして様々な人と仕事をしてきました。その中で様々な人の「出来ます」に遭遇してきた訳ですが、今回はその経験を生かそうかと思っています。

ちなみに本職というか専門は建築系です。まあ今回の話にはあまり関係ありませんが…。

まず結論から言うと、今まで私自身が見た中で「この人は出来るなあ」と思わせる人は案外少なかったりします。

というか、本当に数えるくらいしかいませんでした。単に私がパートナーに恵まれなかっただけの可能性もありますが、そんな単純な話ではないと思っています。

これは一体なぜ?という疑問を、私の体験を踏まえて少し考えてみたいと思います。

■求人の黄金パターン

仕事が忙しくなり人手が欲しくなってくると、「オートキャド(AutoCAD)経験者」という条件で求人を出します。これが今までで一番良くあるパターンです。

そして、応募してきた人たちから「出来そうな人」を見抜いて採用するんです。出来そうな人…とても漠然としていますね。(汗)

そんな適当でいいの?と思うかも知れませんが、まさにおっしゃるとおりです、はい。こんなやり方ではなかなかウマイこと行きません。

なにしろスタートが漠然としています。ですから、やはりというべきか、うまくいかないことがかなりの割合でありました(泣)。これは自業自得と言うべきでしょう。

特に、単純な操作や作業スピードが問題になることが多いです。作図が雑だったり、作図完了までに「は?」と言いたくなるくらい時間がかかったり。

思わず「お願いしますよ」と言いたくなるような、根本的な問題がしょっちゅう浮上する訳です。
私の人を見る目が良くない、という事実はあるかも知れませんが、それだけではないと思います。

恐らくこの「経験者」という表現には、かなり曖昧な部分があるのでしょう。仕事をする上で「曖昧」というのはトラブルの種以外の何者でもありませんから。

■経験者って?

オートキャド(AutoCAD)は使ったことありますか?

私は一緒に仕事をすることになった人には、大抵そんな質問をしてきました。経験者として採用されたのですから、本来ならば確認するまでもないことなんですけど。

でも私はほぼ全ての人に聞きました。ちょっと「うるさいヤツ」になった訳ですが、一緒に仕事をしていく上で非常に大事なことですから、そりゃうるさくもなります。

相手はもちろん出来ませんとは言いません。というか、言えません。なので、ほとんどの人は「はい」と答えます。もしくは「大丈夫です」とかね。

世の中には本当にいろんな人がいますから、中には「いやー実は全く出来ません」とか言い放つ強者もいます、というかいました(汗)。でもまあこれは例外と言えるでしょう。…例外であって欲しいです。

そういった「経験者」達にいざ仕事をお願いしてみると、先程お話ししたように、うまくいかないことの方が多いのです。もうビックリすることの連続です。

なぜそんなことになるのでしょうか?私は一時期悩みました。出来るって言ったのに、ウソだったのか!って思う訳ですね。

でも、そのうまくいかない本人も、別にウソを言った訳ではなかったんです。そして「こんなハズじゃない」と思ってもいます。それが当時の私にはわかりませんでしたが。

答えは簡単なことでした。

私が考えている「出来る」と本人の考えている「出来る」との間に、ちょっとやそっとでは埋まりそうもない程のギャップが存在する、ということです。分かってみれば簡単なことです。

今ならそう言えますが、当時はそんなことがわからなかったので色々と苦労をしました。

「できる」という言葉にはいろいろなレベルがある、ということを私は学びました。これ、本当です。それでは困ってしまうのですが、本当なんです。

■「出来る」のレベル

私は現在、本人の申告する「できる」を大きく3段階に分けて考えています。

と言っても、別に厳密な区分をしている訳ではなくて、この人はこんな感じだな、とか自分の中で勝手に思うだけです。

まずはレベル1。
すこし触ったことがあります、という初級レベル。操作はある程度知っているものの、それをどう組み合わせて仕事をいかに速く終わらせるか、という点については理解出来ていません。実際の仕事ではちょっと戦力外です。

次にレベル2。
きちんと作業が出来る中級レベル。ちゃんと話が通じるかが問題ですが(←これ大事ですよ)、お願いしたことに関しては「いつまでに」という条件も含めてやってくれます。仕事をお願いするのはこのレベルの人が多いです。

最後はレベル3。
完全に使いこなしている上級レベル。困ったことに少数派です。このレベルになると、自分以外に何人かの面倒を見ながら仕事全体を進めていくことが出来ます。もったいないので簡単な仕事などはお願いできません。

もちろんもっともっと出来る人はいます。ですが、さらに数が少ないので、例外中の例外として考えることに私はしています。

逆に考えると、例外中の例外、と思われるレベルになってしまえば、仕事が途切れることはまずないということですが、まあ現実は厳しいです。はい。

■スクールの効果

今はたくさんのスクールがあって、オートキャド(AutoCAD)を教えてくれる場所がかなりの数あります。地方に住んでいる方の為に通信講座も充実しています。

私も今までたくさんの「スクールで勉強してきました」という人と一緒に仕事をしてきました。その結果はどんなだったかと言うと…。

スクールを出た直後のレベルは、私の感覚ではレベル1.5くらいです。微妙な表現で申し訳ありませんが、大まかにはそんな感じです。

オートキャド(AutoCAD)の操作に関しては一通りきっちりと覚えていて、私からあれこれ言う必要がないのですが、効率よく作図を終わらせようとかは考えていない人が多かったです。

でも普通、仕事を始めた時からそんなことは考えません。なので、そう言う意味ではやはりスクールは有利です。そういうプロ的な考え方は、実際プロになってから身につければ良い訳ですし。

スクールのメリットとしては、仕事をしながらのスキルアップが独学の人に比べて早いことと、きちんと教わっているので人に教えるのが上手くなることが挙げられます。

私は独学で全て覚えたので、疑問点があったら全て自分で調べる、という行動(自分と同じ行動)をついつい期待してしまいます。だからすぐに「自分で調べるクセをつけなきゃ」と言ってしまいます。

これは何となく良さそうな教え方ですが、実際はダメです。これは教える側が楽なだけの方法ですから、結果としてはついてこられない人が多いです。(涙)

■「出来る」って?

ちょっと話がそれましたね。

ここで今回私が言いたいのは、マニュアルを読んで操作を覚えただけでは「出来る」とは言わない、ということです。

操作を覚えてはじめてスタートラインに立つんです。この感覚は非常に大事です。

操作を一通り覚えただけで、もう仕事を覚えたつもりになっている人が結構いますが、それでは話になりません。

操作を覚えたその先にはマニュアルがありませんから、自分の頭で考えることが大事です。本当のスキルというのは、そうやって地道に身につけるものだと私は思っています。