前回は「オートキャド(AutoCAD)の図面が実際にどこまで印刷出来るのか」という印刷範囲についてお話しました。
では、図面が印刷できる範囲のぎりぎりには、何を作図すればいいのでしょうか。サンプルの図面はどうなっているのか、ちょっと確認してみましょう。
…どうですか?
サンプル図面を見てみると、なにやら四角で囲まれているのが見えると思います。そして四角の下側には、色々と文字が書いてあります。
これは、図面枠と呼ばれています。
正式な図面とする場合は、必ずと言っていい程図面枠を使用することになりますので、ここで覚えておきましょう。
まぁお約束という訳で、今回は図面枠についての概要を少しお話しますね。
■図面の役目って?
オートキャド(AutoCAD)を使って図面を作図する際に、図面枠がどうして必要なのでしょうか。
そのあたりのことを考える前に、まずはどうして図面が必要なのかを考えてみましょう。
「図面」という言葉を辞書で調べると、おおむね以下のような結果になります。
図面:土木・建築・機械などの構造・設計などを明らかにするための図
明らかにする…ですか。表現がどうしても堅苦しいのはしょうがないですけどねぇ。要するに内容をはっきりさせて、確認する為に図面をまずは描いてみる訳です。
注)図面の目的として、設計の為と施工・製作の為とで若干趣旨が違ってきますが、ここでは施工・製作の場合についてお話しすることにします。
建物にしても機械にしても同じです。実際になにか目的のもの(建物や機械など)をつくる前に、これで問題がないかを確認しないとマズイんですね。
だって「いざつくったら、うまくいきませんでした」では、子供の仕事ですよね。プロなんですから、それじゃ困ります…。
ただ、実際にそういった話が絶対にないのか?と聞かれるとさらに困ってしまいますが…まあそれは置いときましょう。
繰り返しになりますが、そういった不具合をなくす為に、事前に図面の中で検討して確認をするんです。図面の存在価値はそこに集約されます。つくる前に、というところが重要なポイントです。
事前の検討が終わり、つくっても大丈夫!という段階になって初めてつくり始める訳です。そしてこの段階で、図面はまた別の役割を担うことになります。
■書類として残す
検討自体はプロである専門家が行いますが、最終的な指示はお金を出す側が行うのが世の常です。
お金を出す側というのは、建物で言えば施主にあたりますね。
では「つくってもいいよ」という指示は、実際にはどのような形で行われるのか。もちろん印鑑を押して「OK」みたいな感じになるのですが、どこに印鑑を押すのが一番わかりやすいでしょうか。
答えは図面です。
実際につくるものが作図してあるので、もっとも適しているでしょう。この段階で、図面は正式な書類になる訳です。
正式な書類ですから、やはり体裁はきちんとしている方が望ましいでしょう。ということで、ここでようやく図面枠が登場します。前置きが長すぎ!というツッコミがあるかも知れません。
で、図面枠には最低限以下のような情報が必要になってきます。
・プロジェクト名
・請け負った会社名
・図面タイトル(どんな図面かがわかるように)
・作成及び修正した日付
・縮尺
・印座(印鑑を押すところ)
これ以外にも、出来れば修正した内容などを書いておく方が親切です。あまりにも修正内容が多い場合は、非常に大変な作業になってしまいますが。
まとめると、図面を作図し、図面枠もきちんと作成し、そこに印鑑を押されて初めて図面は正式な書類になる、ということですね。
この流れを考えると、図面枠と図面がほとんどセットになっている理由がわかると思います。
でも、図面枠は自分用のオリジナルを作成しなければならないのかというと、そういう訳ではありません。図面枠は、仕事を発注する側が必ず用意していますから。
図面枠は会社によって様々ですが、使い方は変わりません。先程挙げた項目は必ず網羅されているはずです。なので、見た目の違いはあまり気にせずに使ってあげましょう。(←偉そう?)
なぜ今の段階でこんな話をするのかというと、前回お話しした印刷可能範囲ぎりぎりに図面枠が入るので、実際に作図できる範囲がさらに狭くなる、ということを言いたかったんです。
微妙に話の趣旨がそれてしまったような気がするのは私だけでしょうか…。でもまあ、よしとしましょう。
■困った図面枠も多い
余計なお世話かも知れませんが、ここで今まであった図面枠についての感想を少し。
以前使用した某建設会社の図面枠は、A1では印刷できるのですがA3で印刷すると上下の枠が入りません。
これは用紙の印刷出来ない範囲であるマージンによります。
A1サイズでもA3サイズでもマージンは10mm前後ですが、全体の紙サイズとの比率ではA3の方がマージンが大きいということです。
なので、A3で印刷をすると入りきらない訳です。このあたりの話は割と重要ですので、もう少し気を遣って欲しいです…。
最近使った某設計事務所の図面枠も同じで、上下が切れてしまいます。
また、会社のロゴがきちんと入っているのはいいんですが、塗りつぶし部分が激しすぎて、印刷するとインクが乾きにくいです。
多分ペンプロッタ(実際に鉛筆で印刷するプロッタ)だと紙が破れると思われます。まったくもぅ…という感じです。
とは言え会社のロゴは「顔」ですから、ある程度は我慢しなければならないでしょうね。
あと、かなり昔なのでほとんど忘れてしまいましたが、何か標語のような言葉が入っている図面枠もありました。「安全第一!」みたいなヤツです。うーん…内容が思い出せないのが残念です。
「A3で印刷すると図面が全て入らない」というのは、確かに困る話ではありますが、これが致命的になることはありません。
図面枠のオートキャド(AutoCAD)データをもらってサイズを調整してしまえばいいだけですから。
その点ではCADってホントに便利ですよね。