前回までで、オートキャド(AutoCAD)のデータ形式がdwgという拡張子である事と、拡張子の大まかな役目まで理解できたかと思います。
前々回オートキャド(AutoCAD)のデータについてお話しした中で、データが開けないので変換をする、という話が出てきましたが、覚えているでしょうか。
覚えていない、あるいはまだ読んでいない方は一度前に戻って頂くとして、ここではここまでの話を知っているという前提で進んでいきます。
で、変換ってなに?という疑問を持った方もいると思いますので、今回はデータの変換についてお話をしようと思います。
■なぜデータ変換が必要なのか
ずいぶん前にもお話ししましたが、CADの種類というのは本当にたくさんあります。
オートキャド(AutoCAD)はその中の1種類にすぎませんから、違う種類のCADを使っている方はたくさんいる訳です。
どんな種類の仕事であれ、自分の所属する会社とお客さんとの関係だけでは仕事は回りません。ほぼ間違いなく、他の会社に仕事を依頼したり、依頼されたりというのが発生します。
つまり、(ここではCADの話だけに注目しますが)オートキャド(AutoCAD)を使っていない会社の人と一緒に仕事をする機会が必ず出てくる、ということです。
だって、仕事ですから。
これは、たとえあなたがどの種類のCADを使っていても、必ず出てくる問題です。
オートキャド(AutoCAD)ではdwgのファイル、jw_CADではjwwのファイル…という感じで、お互いが違うファイル形式になってしまうんですね。
ただし、必ず出てくるやっかいな問題ですから、きちんと解決方法が用意されています。
種類の違うCAD間で相互にデータをやりとりする為に必要な手段というのが、データの変換ということですね。
■変換の考え方
データ変換の基本的な考え方は「中間ファイル」の利用です。一部仲の良い(?)CAD同士は直接的な互換性を持っている場合もありますが、そんなに数は多くないです。
直接的な互換性とは、例えばオートキャド(AutoCAD)で作図したdwgデータを、変換等の作業をしなくても別の○○CADで開くことが出来る、というような関係ですね。
全てがこのパターンなら楽なんですけど、現実的にはそんなことは不可能です。なので、ここは100歩譲って中間ファイルで対応する、というパターンが一般的になっています。
具体的には、DXFという拡張子のファイルが中間ファイルと呼ばれています。中間ファイルの考え方は、大雑把に言うと以下のようになります。
1.オートキャド(AutoCAD)ではdwgのデータを読み書き出来ますが、それ以外にもDXFのデータも読み書きが出来ます。
2.他のCADでも同様に、そのCAD特有のファイル以外にDXFのデータも読み書きが出来ます。
3.つまり、違うCAD同士でデータを交換しようとするなら、とりあえずDXF形式にしておく事で、互いにデータを読むことが出来るようになります。
データの変換というのは上記のような作業のことを指す訳です。皆が知っているDXFという共通言語があって、データのやりとりはそこで行うんですね。それで中間ファイルなんです。
ちなみに、DXFという拡張子を通常時に使っているCADはありません。あくまでもデータを変換する時にしか利用しないデータ、ということです。
■変換は万能ではない
ただ、DXFデータも万能という訳ではありません。線など単純なオブジェクトは完全に変換されるのですが、専門的なCAD特有の情報(属性や高さ情報など)はあまりうまく変換されません。
「上手く変換されない」というのは、やや控えめな表現かも知れませんが、まあ完璧でないことは確かです。
文字の基準点や寸法線など、CADの種類によって個性の出やすい項目も若干苦手です。
例えば円の中に数字を入れたデータなどは、DXF変換をして他のCADにすると、文字が円から大きくはみ出してしまうことが多いです。
ただ、こうした変換の欠点は確かにあるのですが、個人的にはある程度割り切って考える必要があると思っています。変換できるだけ有り難いという気持ちになれば、多少の問題など気になりませんから。
だって、変換できないのなら全て描き直しになるんです。それに比べれば、線だけでもかなり助かりますよね。
DXF変換にはある程度そういった感覚が必要である、ということを最後にお伝えして、データ変換の話は終わりにしたいと思います。