今までかなりの時間を割いて、オートキャド(AutoCAD)の文字設定とかフォントとか、そういう細かい話ばかりをしてきました。

それ以外にも全角とか半角とかビッグフォントとか、本当に色々な項目が文字にはあるんですね。

確かに文字の大きさやフォントなどは、図面の仕上がりに影響するので非常に重要な要素であると言えます。ですが、それ以前にもっと重要な要素があります。

今回はそのポイントについてお話ししようと思います。

■読めるかどうか

今まで何度もお話ししてきましたが、図面というのは描いただけではなんの価値もありません。人に見られて、そして使われて初めてその価値を発揮することが出来ます。

まず、図面は見られることが前提だということですね。

なので、図面の中に記入されている文字も、当然の事ですがきちんと読める必要があります。せっかく記入されていても、読めないのであれば意味がないですから。

どうしてこんな分かりきったことをお話しするのか、と思う方もいるかも知れませんね。文字なんだから読めなければ意味がないなんて誰でも分かることです。

どうしてかと言うと、この当たり前のことをきちんと出来ていない人が多いからなんです。

今まで自分が描いた図面を含め、たくさんの図面を見てきましたが、見やすい図面と見にくい図面の違いというのは、大きく分けて2つのポイントを押さえているかどうかにかかっています。

ひとつは寸法の入れ方、そしてもう一つは文字の入れ方です。

寸法というのは結局は数字ですから、要するに文字をどのように記入するかによって、図面の見映えが大きく変わってくることになります。

そして文字の入れ方に関しての第一条件が「きちんと読めること」ということになるんですね。

■読みにくいパターン

では、図面の中で文字がきちんと読めない状況というのはどのような場合なんでしょうか。原因を少し考えてみましょう。

原因1:文字が小さい
図面を印刷して見る場合(つまりほとんどの場合)、文字の高さは最低でも2mm必要です。この2mmというのは最低のサイズですから、実際は2.5mm程度の高さが必要になります。

文字の高さが2mm以下だと「よ~く見れば分かる」というレベルになってしまい、図面としてはあまり役に立たなくなります。読みにくい原因の一部は、こんな単純なことだったりします。

原因2:文字が他の図形と重なっている
文字が読めない原因としては、恐らくこれが一番多いと思います。線や円などの上に文字を記入してしまい、印刷をしてみると文字と線が重なっていて読めないという悲しい状態です。

これは良くあることですが、良くあるが故に作図者としては気をつけなければいけません。せっかく文字を記入しても読めないのでは、記入していないのと同じ事ですから。

原因3:文字同士が重なっている
これも原因2と同じ話ですが、文字同士が重なるのは圧倒的に寸法線の場合が多いです。なぜかというと、寸法線は数値を自動で入力してくれるからです。

寸法線の特徴として、まずひとつ自動数値入力があります。これは、寸法を記入したい点をクリックすると、その間の適切な寸法値が自動で記入されるという便利な機能です。

確かに便利なのですが、例えば細かい寸法をたくさん入力した場合などは、自動で記入される寸法値がほぼ間違いなく重なってしまいます。

こうなるのは機能的に仕方がないことですが、そこから先の、重なった寸法値を見やすいように再配置することは、作図者の仕事です。

そして、これをやらないと、文字が激しく重なった図面が出来上がります。こうなるとやはり寸法を記入した意味がありませんから注意が必要です。

原因4:説明対象物から離れすぎている
基本的に文字というのは図面の中で、何らかの説明をする役目がある訳です。この線はこういう意味があります、とかそういった説明です。

その説明する文字が、説明される図形からはるかに離れていると、当然の事ながら分かりにくくなってしまいます。

文字は、その文字が説明している相手と出来るだけセットにしておくことが、見やすい図面の為には必要だと言うことですね。

■ではどうすれば良いのか

色々と文字が読みにくくなる原因を考えてきましたが、それでは以上の全てを反映させた図面が実際には描けるのでしょうか。そこが問題ですよね。

これは図面の内容や密度によって異なりますが、密度が濃くなればなるほど、文字の処理がどんどん難しくなってくることだけは確かです。

他の図形と重ならないような位置で、なおかつ説明対象物の近くに文字は配置すべきです。と私が言っても、物理的に不可能な場合だってたくさんあるでしょう。

では重ならないように文字を小さくしても良いのかと言えば、決してそんな訳ではありません。

ではどうすれば良いのでしょうか。

これは非常に難しい問題ですが、スペースがなくて物理的に不可能な場合は、やはり文字を引き出して書くしか手はありません。線に重なって読めないのはマズイので、少々遠くても文字は読めた方が良いです。

そして、文字を引き出すスペースすらない場合。これはもう縮尺を考え直す必要があるのかも知れません。

1/50の図面で文字が全然入らなくても、1/30にするとあっさりと文字が収まります。なので、もし紙のスペースが許せば検討の余地はあるでしょう。

縮尺の変更が無理な場合はもう最後の手段です。文字の高さを小さくするしか方法はありません。それでも高さは1.5mmくらいがミニマムだと思いますが。

という訳で…

①文字を引き出して読めるようにしてみる
②それでも無理な場合、縮尺の変更を検討する
③それもダメなら文字の高さをもう少し小さくする

作業としては①→②→③の順番で文字の調整をしていくことになります。この作業は結構時間がかかりますが、見やすい図面を作図する為には絶対に必要なんです。

上記の順番を見ても分かると思いますが、文字を重ねてもOKという選択肢はありません。重なって読めなくなるくらいなら、多少遠くても、多少小さくても、という考え方をしています。

図面を実際に見る人の立場で考えると、読めないよりもまだ読みにくい方がマシということになります。作図者としては、見る側の気持ちになって作図をすることが大事だということですね。