文字に関しては、設定が多くて面倒、という特徴を今まで何回かお話ししてきました。あんまり言い過ぎると、文字全般を嫌いになってしまうかも知れませんが…。
でも確かに設定が多いのは本当のことで、たくさんの設定を知ることによって、ようやく文字は図面上にきちんと表示されることになります。
ですが、設定を知ってさえいれば万事OKかというと、そういう訳ではないんですね。やはりオートキャド(AutoCAD)の知識以外にも、作図者の知識は必要になってきます。
今回は文字関連についてのお話しですが、オートキャド(AutoCAD)の機能的な話ではありません。
図面を作図するにあたり、作図者が最低限知っていなければならない事と、文字を記入した後で必ずやらなければならない事について少し考えてみたいと思います。
■ツールを上手に使う
今まで何回かお話ししてきましたが、オートキャド(AutoCAD)というのはあくまでもツール(道具)なんです。いくら便利な機能を搭載したとしても、恐らくツールの域を出ることはまずないでしょう。
万が一オートキャド(AutoCAD)がツール以上の存在になるとしたら、もう私を含めて皆さんの仕事は全くなくなると思います。…が、まあ今のところはあり得ない話です。
どうやって作図を進めるか、今日はどこまで作業を進めるか、遅れているならどうするかなど、色々な要素を絡めて考えなければならない部分は、やはり作図者がやらなければならない仕事です。
そしてそのあたりに、作図者として腕の見せ所がある訳です。他の人と差をつけるポイントとしては、作図速度よりも段取り能力の方が差をつけやすいですから。このあたりの話はもっと後でしますので、ここではサラッと流すことにします。
オートキャド(AutoCAD)は優秀ですが、言われたことしかやりません。そして、そんなオートキャド(AutoCAD)に指示を出すのは作図者以外にはいない、ということですね。
文字に関しても、高さや巾の設定やフォントなどはオートキャド(AutoCAD)が用意した設定を、やはりこちらで考えて決めるという形をとります。
何かを決定するのはいつも作図者である、という形は、どこまで行ってもきっと変わらない事だと思います。まずはこの点を頭に入れておきましょう。
■色々な間違い
そして、文字の内容を入力するのも当然のことながら作図者ということになります。
文字のフォント以前に、入力する文字の内容というのは非常に重要なんですね。これが間違っていると、図面としてあまり意味がありません。
文字の設定以前に私が言いたいのはこれなんです。いくら綺麗なフォントで記入しても、内容が間違っていたら見るだけ無駄な図面になってしまうんです。
作図者としてそれは絶対に避けたいところですが、なかなか間違いというのは簡単にはなくならないものです。
という訳で、ここでは色々な文字入力ミスのパターンと、それぞれ原因及び対策について考えてみたいと思います。
・文字の記入間違い
文字の間違いの中ではこれが一番多いかも知れませんね。単純に文字の記入を間違える場合です。数字の打ち間違いや余計な文字を打ってしまうなど、一番基本的な間違いです。
この間違いをなくす為には、作図が完了図面を印刷してしっかりとチェックする必要があります。
…というか、図面のチェックをするのは作図者として当たり前のことなので、こういったミスが出るのは恥ずかしいことだと思わなければいけません。
・文字の変換間違い
これもありがちな間違いです。キーボードで打ち込んだ文字は正しかったのですが、漢字変換で台無しになってしまうパターンですね。
「平面図」が「平メンズ」になっていたり「廊下」が「老化」になっていたり、例を挙げていくとキリがありませんが、まあそういう感じの間違いです。
こういった間違いを含んだ図面を送られると、少し時間に余裕がある時は結構楽しめたりします。「うーん、そうきたか」みたいにチェックしながら修正をする訳です。ちょっと暗いです。
この間違いも、図面チェックをしっかりと行うことによって、ほとんどなくすことが出来ます。
・入力者の勘違い
今回私が一番お話ししたいのがこれです。間違いの中で最もタチの悪い種類ですね。
キーの打ち間違いとか変換の間違いとかの次元ではなく、作図者本人の勘違いが原因で、文字を入力する瞬間からもう間違えているというパターンです。
この間違いの原因は、上記のものとは少し違ってきます。入力・変換間違いに関しては単純なミスが原因ですが、この間違いは作図者の勉強不足が原因ですから。
私が今まで見てきた中で色々とありましたが、極端な例をひとつ挙げたいと思います。
かなり昔のことですが、簡単な建物のトレースを外注さんに依頼したことがありました。トレースのもとになる図面も綺麗でしたから、普通にトレースをすれば何の問題もない仕事です。
スケジュール的にはあまり記憶がないので、恐らく納期には間に合ったのだと思います。ですが、届いた図面を印刷した私は、またしてもしばらくの間呆然としてしまいました。
部屋名が何かおかしいんです。確か建物は病院だったので、部屋名はこんな感じだったと思います。
ホール
受付
廊下
待合い
診察室
カンファレンス
ICU
院長室
応接室
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でも、上記のような部屋名が、作図者の偏見によってかなり歪んで変換されていたんです。知っている側から見れば、ちょっとあり得ないような間違いです。
…だいぶ長くなりそうなので、部屋名の間違いについては次回に続くことにします。