縮尺についてのお話しはこれで最後です。いやいや…少しばかり長かったですね。
さて…。
縮尺が変わることによって、各種設定にはどんなが影響があるのでしょうか。縮尺が変わっても変化のない設定と、縮尺にあわせて変更しなければいけない設定には、どんな種類があるのか。
今回はこの点について考えてみたいと思います。
このあたりの話は、今までの内容をきちんと理解出来ていれば、これは特に難しい話ではありませんので、さくっと覚えてしまいましょう。
■どんな影響があるのか
まずは今までの復習を簡単にしてみましょう。
紙に収まり切らない大きな対象物を図面にする際、必要に応じて縮小し実用的な図面とする、という話を前々回しました。
そして、具体的な方法として印刷する際の縮尺設定、またはペーパー空間での縮小を使う。これを前回お話ししました。
…ここまではよろしいでしょうか。
ではここで、縮尺が違うことによって変更しなければならない設定について考えてみましょう。
1/50で印刷した図面と1/100で印刷した図面とでは、対象物の大きさがそれぞれ違います。その為に縮尺を決めているわけですから、ここまでは当たり前の話です。
大きさが違っても、スケールをあたれば寸法は計れます。その為に、スケールの目盛がある縮尺でなるべく作図をする、というお話は以前にしました。
では、1/50の図面と1/100の図面とではどの程度大きさが違うのか。…まあこれはすぐに分かると思いますが、1/50の半分の大きさが1/100ですね。
1/50で印刷した図面から、1/100の図面はさらに半分の大きさになる、ということは…。使える図面にする為には、何を替えなければならないでしょうか。
ヒントは、半分の大きさになると困るモノで、スケールで計ったりはしないモノです。
…
…
…
考えてみましょう。
…
…
…
答えは文字ですね。文字は半分の大きさになると読むのが大変になってしまいます。なので、縮尺によって設定を変える必要があるんです。
■文字のお約束
図面(CADでの、ですが)の世界では、印刷された時点での文字の大きさは、最低でも2mmは必要だと言われます。これ以上小さくなると、文字の判別が厳しくなるというのが一番の理由です。
2mmはあくまでも最低の大きさなので、通常は2.5mm程度必要だと思います。2mmだと年配の方にはかなりキツイです。
では、印刷した結果文字の高さが2.5mmとなる為に、1/50の図面では文字の高さをいくつに設定すればいいのか。ここで少し考えてみましょう。
対象物はそのままの大きさで作図しますが、文字をそのままの高さ2.5mmで印刷したらどうなるでしょう。
印刷時に1/50に縮小する訳ですから、印刷結果は2.5/50となり、0.05mmの文字として印刷をされることになりますね。
0.05mm?シャープペンシルの芯が通常0.5mmですから、その1/10の大きさということになります。うーん…どこに描いたか、間違いなくわからなくなりますね。ゴミみたいな感じです。
勘の良い方ならもうわかったと思います。文字の大きさは紙のサイズと同じ考え方なんですね。
1/50の図面では、2.5mm×50=125mmの大きさで文字を作成し、印刷の時に1/50に縮尺する。この考え方は、まさに図面範囲の考え方と一緒です。
文字の大きさについての考え方は、当然寸法線の数字にもあてはまります。詳しくは寸法の項目でお話ししますが、縮尺によって設定を変えなければならない、ということだけは覚えておきましょう。
縮尺に関するお話はこのあたりでお終いにしたいと思います。縮尺に付随してほかに色々な設定があるのですが、細かい話はその都度していけばいいですから。
なによりも大事なのは、今までにお話しした基本的な考え方の部分です。途中で何度も言いましたが、基本さえ押さえておけばあとはその考え方を応用するだけです。
応用というのは比較的楽な作業ですから、後回しにしてしまっても全然大丈夫なんですね。
という訳で、まずは基本です。ここで躓いた場合は、先に進もうとせずにもう一度読み直すことをオススメします。それでも良く理解できない場合は、私あてにメールを送ってみてくださいね。
■オートキャド(AutoCAD)の縮尺って…
最後に…これは私の個人的な考えですが、オートキャド(AutoCAD)の縮尺に関する考え方を完全に理解すると、その自由度の高さにハマることになると思います。
よく「○○CADでは自動で設定してくれるのに…」みたいな話を聞くのですが、自動でやってくれるというのは要するに「融通が利きにくい」ということなんです。
スペシャリストになればなるほど、融通の利かない機能には不満が出てきますから、自分で自由に設定できるオートキャド(AutoCAD)の方が使いやすく感じるはずです。
そうなったらもうオートキャド(AutoCAD)は手放せないツールになると思います。
そして、あなたがオートキャド(AutoCAD)を手放せないと思うくらい自由に使いこなせるようになれば、私としてはこれほど嬉しいことはありません。