なかなか前に進んでいきませんが、ひとまずオートキャド(AutoCAD)には「メートル系」と「インチ系」が存在するという話まで進んできました。

まだ先は結構ありますが、ここで一息入れましょう。

まだまだいける!どんどん進みたい!という方はそのまま次に進んで頂きたいと思います。

■他人の失敗は密の味?

前回はメートル系とインチ系の違いについてお話ししましたので、今回はそれにまつわる私の失敗談をお話ししようかと思います。

他人の失敗談なんて聞いてもしょうがないのでは?と、そう思うかも知れませんが、これが意外とそうでもないんですね。

これはあくまでも私の考えなのですが、「経験」と呼ばれるものは、もちろんうまくいった経験もありますが、うまくいかなかった、失敗した経験のほうがより強く印象に残ります。

そうすると、次回同じ事をやろうとする際に「そういえば前はこうやったら恥をかいたな…」という記憶が助けになる訳です。

そういう失敗を繰り返すうちに、ひどい失敗をあまりしなくなっていきます。

これを「経験」と呼ぶのだと、少なくとも私はそう思っています。

ですから、人の失敗談を聞いて「バカだな」で終わらせるのではなく、「こういう失敗もあるのか」と感じ、それを自分の経験にしていければ良いのではないかと思います。

他人の失敗を自分の経験にする訳です。これは仕事をする上で、かなりオススメのやり方です。私も積極的にやっています。

だって、毎回失敗したり恥をかいたりしてたらヘコみますよね?長く仕事をしていく上で、あまりにもヘコむのは精神的に良くないです。やってられないと思ってしまうと、なかなか前向きな思考は出てきませんから。

なるべく平常心で、長い期間きっちりと経験を積む。そうやっていくうちに、積んだ経験の分だけあなたの技術は確実に上がっていきます。

仕事は結局最後までやり遂げた人が勝ちですから。

…と、なんだか難しい話になってしまいました。これじゃあ全然一息入れられませんね(汗)。こんなに偉そうなことを話しておきながら、次に失敗した話をするのは気が引けますが…。

■多人数で仕事をすると…

何年か前の話ですが、以前私が担当した大規模な現場(私は建築系なんです)で、8人ぐらいのチームで作図をした事がありました。

どの業界もそうなのかも知れませんが、建築の図面屋さんはそれぞれの人がそれぞれ「自分流のスタイル」というものを強く持っていることが多いんです。

要は個性が強い人が多いんですね。それは多分、私のまわりだけではないハズです。

でもオートキャド(AutoCAD)は細かな設定が多いですから、ある程度あわせなければならない部分があります。

まず、最低限合わせなければならないと思ったのは、レイヤー・色・線種・ハッチングパターン・図面ファイル名の付け方・文字の大きさ・寸法スタイル…とまあ色々あった訳です。

最低限といいながら、かなりの項目がありますね。(汗)

全員バラバラではやりにくいので、決めるべき項目をひとつずつ打ち合わせて決めて、それからようやく作図をスタートさせました。とりあえずはオーソドックスなやり方です。

でも、しばらくして集まってきた図面を見て「?」となりました。何人かのハッチングパターンが異常に細かいんです。

いや、細かいというレベルを通り越して真っ黒になっていました。おかげでその部分の寸法などがまったく見えない状態です。

早速彼らの所に行き「決まり通りにやってください!」と言ったのですが、彼らは決まりの通りにやっている、と言い張ります。「本当ですか?」という感じで、半分頭に来ながらとりあえずデータを見てみると…。

彼らの言うとおり、本当に設定通りになっているんです。どうしてか、その理由が当時の私には分かりませんでした。それなりにオートキャド(AutoCAD)の経験があったつもりだったのですが…。

彼らは彼らで「何でこんな設定なんだよ…」と思いながら作図を進めたのでしょう。そういった微妙な不満を抱えながらだと、当然作図の効率は良くないです。

とりあえず文句を言いたかった私は(←若いですね)不完全燃焼のまま自分の席に戻ってきました。

そしてしばらく調べた結果、メートル系とインチ系でハッチングパターンが違うことを知ったんです。今考えると簡単な事ですが、当時はそんな設定があることなんて知りませんでした。

当時私が「この設定でやりましょう」と言ったその設定は、見事にインチ系の設定だったんですね。

だからメートル系の設定だった何人かの人は、ハッチングパターンが異常に細かくなってしまったんです。

そこで、もう一度彼らの所に行き、訳を説明して謝りました。当時の私は大人気なかったのですが、まわりの方は大人だったので許してくれました。

許さない、と言われても困ってしまいますが。

■対処方法に困る

ただ困ったことに、いまからメートル系の単位に統一したとしても、今まで作図した分にはインチ系が混在してしまっています。これをどうするか、少し悩みました。

結局はそのままにしてしまい、修正が出てきた段階で徐々にメートル系に移行しよう、という(やや後ろ向きな)話になりました。

建築の図面は修正が入ることが当たり前ですので、修正をかける時に、ついでに直してしまうという作戦(?)です。

そして、それからしばらくして、ようやく全てをメートル系に統一することが出来ました。

私個人としては実に勉強になった経験でしたが、仕事の効率だけで考えると非常に無駄の多いやり方でした。

そして何よりも怖いのが、メートル系とインチ系の違いを知らないだけでその無駄が発生する、ということです。これは他のどんなことにも共通して言える話ですよね。

■恥をかいて覚えること

ここでは割とさらっとお話しましたが、実際はかなりピリピリしたムードになってました。

それに、オートキャド(AutoCAD)に関する知識の乏しさを大声で宣伝したようなモノですから、今考えると非常に恥ずかしい話です。(汗)

タイトルにも書きましたが「知らない」というのは怖いことです。確信をもって全然違う方向に進んでいくことが出来るのは、知らない人だけですからね。

そしてさらに言うと、人に指示を出す側になった時は「知らない」ということは「怖い」だけではすまない話になります。

下につく人に無駄な時間をとらせることは、上司としてやってはいけないことだからです。

これはリアルな話で、私はこんな感じにたくさんの恥をかきながら、徐々にオートキャド(AutoCAD)のスキルをあげていきました。

そして今でも時々恥をかいています(汗)。失敗ってヤツはなかなかなくならないものですね…。

でも皆さんは少なくとも、メートル系とインチ系の設定に関しては、恥をかかないですむハズです。もう知ってるんですから。他人の失敗を自分の経験にする、というのはこういうことです。

なるべく恥をかかないでスキルアップをしていくのが理想なんですよね…。私には無理でしたけど、皆さんには可能性がありますから、理想に向けてぜひ頑張ってくださいね。