前回までの説明で、オートキャド(AutoCAD)で作図した線をようやく一点鎖線に替えることが出来ました。

でも、実際にやってみた方の中には、「線種を変えたのに、どう見ても実線なんですけど…」とか「一点鎖線にはなっているけど、ちょっと細かすぎ」とか思った方は、かなり多いのではないでしょうか。

練習用の図面を見ながら今までの説明通りにやってくると、ほぼ間違いなくそう思うはずです。

これは説明が不足してるということではなくて、順序を追って説明しているだけですから、どうか最後まで読んでくださいね。

一点鎖線が実線に見えてしまう原因はいくつかありますが、考えられる原因のひとつとして、今回は線種尺度についてお話ししたいと思います。

■線のピッチとは?

まずは、線のピッチとは何かについて。線のピッチとは、例えば点線の場合は点の細かさを意味します。

オートキャド(AutoCAD)では、全てのオブジェクトに線種尺度という設定があるんです

細かい描写をすると、点線とは短い線が一定の間隔で連続している線のことです。ここで言う線のピッチとは、点線を構成する短い線の長さと線同士の間隔のことを指します。

これが細かすぎるとどうなってしまうのか…。

例えば短い線の長さが0.01mmで、線同士の間隔が0.01mmだったらどうなるでしょうか。まず肉眼では見えませんよね。きっと虫眼鏡が必要です。

常識的に考えると、こんな線は点線とは呼べません。というか、手描きの時代にこんなことやったら、長い定規で頭をバシッとやられること間違いなしです。

そこがオートキャド(AutoCAD)の特徴のひとつなんです。

CADの画面は虫眼鏡以上に拡大が出来ますから、そこまで拡大すると「おお、なるほど」的にちゃんと線種が設定されています。超細かいですけど…。

でも、オートキャド(AutoCAD)はあくまでも作図の手段であって、最終的には図面を印刷して、その印刷された図面を使用するのが目的なんです(←とても重要です!)それを忘れてしまってはいけません。

最終的な出来上がりの段階でちゃんと見えなければ、オートキャド(AutoCAD)で作図をするメリットがなくなってしまいますよね。それではもったいなさすぎます。

オートキャド(AutoCAD)に限らずコンピューターってやつは、どんなにおかしな設定でも「いや、そのように指示されましたから」という感じで、実に忠実に動いてくれます。

そこが良いところでもあり、悪いところでもある訳ですが。

ちょっと正直すぎなオートキャド(AutoCAD)をうまく使いこなす為には、指示すべき我々が指示するポイントをきっちりと押さえておく必要がある、ということですね。

今回お話しする線種尺度の設定も、押さえておく必要がある設定のひとつです。設定方法は次の通りです。数字が変わるだけですから、色々と試してみましょう。

■LTSCALE(線種尺度)

グローバル線種尺度を設定するコマンドです。

前回、プロパティ管理の項目で出てきた線種尺度とは考え方が少し違います。何せグローバル(世界的な、とか、地球規模の、という意味)ですから。

チョット大げさなネーミングなのでは…と思うのは私だけでしょうか。

前回、プロパティ管理で線種尺度を変更するのはごく限られた場合です、という話をしました。それは何故かというと、このグローバル線種尺度の設定があるからなんです。

グローバル線種尺度を変更すると、図面全体の線種尺度がゾロッと変更されます。とっても簡単ですね。だって、グローバルですから(←しつこい)。

では、実際に線種尺度はいくつに設定すればいいのか。これは先程もチラッとお話ししたとおり、図面の縮尺によって決まってきます。

線のピッチは作図対象物に対して一定ですが、印刷時の縮尺によって作図対象物の大きさが変わってきますよね。

そうすると、1/50で印刷した線よりも、1/100で印刷した線の方が、ピッチが細かく見えてしまうんです。

このあたりの考え方は、文字の大きさの考え方と同じですね。ですから、縮尺の分母の数字が大きいほど(作図対象物が小さく印刷されるほど)グローバル線種尺度は大きくする必要があります。

そうしないと、作図対象物と同じく小さくなっていき、ピッチが細かく見えすぎて実線になってしまう、という結果になります。

■程よいピッチを

また、ピッチが細かすぎるのも困りますが、粗すぎるのも「なんだかなあ」という感じになってしまいます。

点線のハズなのに、印刷してみると線が消えている…と思ったら、線のピッチが粗すぎたという感じですね。そういう図面は「素人丸出し」と思われるので、避けた方が無難です。

ピッチが粗いと、点線が実線になるどころか、線と線の間が飛びすぎてしまい、線を引いていないように見えます。せっかく引いた線が見えないという状態は、かなり寂しいです。

どちらの場合にも言えるのですが「線種がわかりにくい」とか言う以前の話として、適切な線種尺度を設定していない図面はカッコ悪いです。図面がビシッとしまりません。

これは皆さんのセンスによって好みが多少変わってくることでしょう。また、取引先の設定が決められている場合も多いかと思います。なので、ズバリいくつで設定しましょう、という話はここでは出来ません。

まずは相手に設定を確認してみて、特に決まっていないようでしたら自分で決めてしまいましょう。大抵の人は、余程おかしな設定にしない限り、そこまで気が付きませんから。

ちなみに私の線種尺度の設定ですが、大体は以下の式でグローバル線種尺度を決めています。

グローバル線種尺度 = 縮尺の分母 × 0.2

例えば1/50の場合は10(50×0.2=10)としています。これで今まで特に苦情が来たことはありませんから、無難な所なんだろうと思います。良かったら参考にしてみて下さいね。