ちょっと余談もありましたが、ここで本線に戻りましょう。

あなたが今まで説明の通りに作図してきたとすると、画面上には通り芯が1本と、通り芯番号を記入する前の円が描かれていると思います。

それと、少し離れたところに、コマンドを試しにやってみた際の線やら円やらがあるか知れませんね。今回はあくまでも練習なので、こういった図形がそこら中にあることは全然悪くありません。

さて…。

画面上に2つ以上のオブジェクトを作図したのなら、そろそろオブジェクトスナップについてお話しした方がいいでしょう。という訳で、今回はこの耳慣れない機能の話をしたいと思います。

オブジェクトスナップは、オートキャド(AutoCAD)を使う上で非常に重要な機能です。ここでぜひ覚えてしまいましょう。

■オブジェクトスナップって?

オブジェクトスナップ…。

そう聞いただけでピンとくる方はあまりいないと思います。というか、全然いないでしょう。では、どういう意味なんでしょうか。とりあえず日本語にしてみましょうか。

オブジェクト:線や円や文字など(オートキャド(AutoCAD)では)

スナップ:噛みつく、飛びつく、など。

うーん、どうでしょう。なんとなく雰囲気は掴めました?ちょっと微妙なところではないかと思いますがいかがでしょうか。

きちんと理解できると「あー、そう言われればねぇ」という感じになるのですが、初めて聞くと「?」となってしまいそうです。

オブジェクトスナップとは、オブジェクトに対して決められた点を正確に選択する機能のことです。決められた点を正確に、きっちりと選択。思わず2回書いてしまうくらい重要な機能です。

オートキャド(AutoCAD)の特徴のひとつとして、(良くも悪くもですが)ひたすら正確な事が挙げられます。オブジェクトスナップという機能は、その特徴を作図者が守る為にどうしても必要な機能なんですね。

正確に選択はいいんだけど、決められた点って何?と思った方もいると思います。決められた点というのは色々あります。では逆に、正確に作図する為には、どんな点が選択出来ればいいと「あなたは」思いますか?

実際に図面を作図していないとなかなか出て来ないかも知れませんが、ここで少し考えてみてくださいね。何度も言いますが、自分で考えて疑問に思ったことは、すぐに覚えられますから。

今回で言えばどうでしょうか。今のところは線と円が図されている訳ですが、完成形としてはこの2つのオブジェクトはくっつくことになるち思います。

では、線と円をくっつける為には、あなたがどの点を選んであげればいいのでしょうか。

線の一番端の点と、円の外周の点ですね。もっと言えば円周上の多数ある点の中で、ちょうど90度の所にある点です。オブジェクトスナップでは、そういった種類の点を正確に選択してくれます。…便利!

選択出来る点の詳しい種類については、もう少し後でお話ししますので、ここでは基本的な考え方をまず覚えることにしましょう。

正確に点を選択とありますが、その為にはやはりカーソルも超正確に動かさないとダメなのかというと、全然そうじゃありません。そんなんじゃ何の為のオートキャド(AutoCAD)だか分かりませんからね。

画面上では多少ズレた位置をクリックしても、データ上で正確な点に向かってスナップする(飛びつく)機能、ということです。どのくらいの距離まで飛びつけるかも、好みで設定が出来るんですね。

オブジェクトスナップという機能がどんな感じなのか、これでなんとなく掴めたでしょうか。

■正確な図面を描くためには

繰り返しになってしまいますが、このオブジェクトスナップという機能は、オートキャド(AutoCAD)で正確に作図する為には必要不可欠な機能なんです。

オブジェクトスナップを上手に使って作図した図面と、全然考えないで作図した図面とでは、完成度に雲泥の差が出てしまいます。

というか、オブジェクトスナップをきちんとやってない図面というのは、オートキャド(AutoCAD)のデータとして不完全なので使えないんですよね。

私は仕事柄よくそういった種類のデータを受け取ることがありますが、受け取ってデータを見ると作図者のレベルが見えてきて悲しくなってしまいます。

現在はほぼ100%の割合でデータも納品しますから、使えないデータを出してしまうと一発で信用を失ってしまうでしょう。

こんな図面を描いたのは誰だ?という話になる訳ですね。これは笑い事なんかではなくて、本当にある話ですから怖いです。

オートキャド(AutoCAD)の経験を積んでいくと、図面データを見るだけで、作図した人がどの程度の経験を積んでいるかが大体わかるようになります。

わかるようになってしまう、と言った方が良いかも知れません。あまり良いことばかりではありませんから…

そうなってくると、まあ性格も関係してきますが、他人の作図したデータを修正するのが嫌いになってきます。今回に限ってはあまり関係のない話なのでサラッと流しますけども。

という訳で、情けないデータを提出してしまうと、データと同じく情けない作図者だと思われてしまう、ということが分かって頂けたでしょうか。

相手が印刷した図面だけを見るような素人であれば大丈夫かも知れませんが、それではプロとは言えません。

作図者としてナメられない為に、作図する側はデータの内容について出来る限り気を使う必要があるんです。これはオートキャド(AutoCAD)で作図するプロとして、プライドをもってきっちりやるべきだと私は考えています。

でも、ここで発想を変えてみるとどうでしょうか。逆の場合をちょっと考えてみましょう。情けないパターンではなくて、良い場合のパターンですね。

きっちりとした図面を作図して、きちんとした図面データを提出する訳です。そうするとどうなるでしょうか?見る人が見れば、ダメなデータの見分けもつきますが、逆に良いデータの見分けもつくんです。

そうすると「おっ!いいねぇ」ということになり、一気に信用を得ることも出来るかも知れないですよね。逆に考えると、これは他人と差をつけるチャンスな訳です。

少なくとも私は、図面の正確さもそうですが、データの正確さも見ていますので、きっちりと描かれた図面データを見ると「おっ!やるなあ」と思ってしまいます。

残念なのは、そう感じることが少ないことですね。

まあそれほど単純な話ではないにしても、少なくとも「何これ?」と思われることはなくなります。それだけでも価値があると思いますよ。

なので、どちらにしてもオブジェクトスナップは必要不可欠、ということになります。重要な機能と言ったのは、そういう理由があるからなんですね。

前置きはこのくらいにして、これからは具体的な話をしましょう。スナップする点にはどんな種類があるのか、という話ですね。これは少し長くなりそうなので、次回にしたいと思います。