今回は、オートキャド(AutoCAD)が持っている文字記入のコマンドをもうひとつ紹介しようと思います。

文字を図面に記入する為のコマンドとして、文字記入(TEXT)コマンドを前提として今まではお話ししてきました。

でも、文字記入のコマンドはもう1種類あって、それぞれが微妙に異なる機能をもっています。使用頻度としては決して高くはありませんが、文字関連のコマンドとして覚えておいた方が良いでしょう。


■違いを考えてみる

マルチテキストと呼ばれるくらいなので、一般のテキストとは何かが違います。という訳で、ここでは一般のテキストとの違いについて考えてみましょう。

・複数行の文字が作成可能
マルチテキストエディタと呼ばれる独自のテキストエディタを使用して文字を編集する、というのがマルチテキストの大きな特徴です。

そのエディタ内で改行をしていけば、2行や3行の文字列が作成できます。同じ作業をテキストでやろうとすると、1行の文字をコピーして行ごとに文字編集をする必要があります。

・文字列の中で異なる設定が可能
マルチテキストなら、ひとつの文字列の中でフォントや文字のサイズ、色などを文字ごとに設定できます。

目立たせたい文字だけ大きくしたり赤文字としたり、アンダーラインを引いたりが自由自在です。要するに普通のワープロみたいな感覚ですね。

この作業を普通のテキストでやるのは大変です。文字の色や大きさごとに文字列と文字スタイルを作る必要があるからです。

アンダーラインに関しては、特殊文字を使用すれば引くことが出来ます。でもデータの変換などを考慮すると、使わない方が良いと私は思っています。

【補足:アンダーラインの開始文字と終了文字部分に、「%%U」というオートキャド(AutoCAD)特有の特殊文字を記入する為、他のCADに変換するとその特殊文字が印刷されてしまいます。これを多用した図面を変換するとひどい目に遭います】

それなら文字の下にLINEコマンドで線を一本引いた方が全然楽です。文字を編集してアンダーラインを引きたい文字が動いた場合、線を手動で調整するしかないというのが欠点ですが…。

・文字スタイルを準備する必要がない
全角の文字を表示する為にはビッグフォントを設定する必要があります、という話を今までしてきました。ビッグフォントを指定しないのであれば、TrueTypeフォントを使うという話もしました。

ですが、マルチテキストだけを使用するのであれば、その作業が必要なくなります。なぜかというと、マルチテキストエディタ内で全角文字を使用すると、自動的にTrueTypeフォントを設定してくれるからです。

私はあまりマルチテキストを使っていませんが、これは意外と便利かも知れないなと書きながら思ってしまいました。

日本語を表示させる為にあれこれ悩むのであれば、マルチテキストを使ってどんどん文字を記入していく方が楽な場合もあるのではないかと思うんです。

私はもう慣れてしまいましたが、確かにビッグフォントなどの設定はメンドクサイし分かりにくいです。それよりも簡単な方法があるのなら、試してみる価値はありますね。

では次に、具体的な操作方法についてお話しします。

■MTEXT(マルチテキスト)

オートキャド(AutoCAD)の画面上に文字を記入するコマンドです。その特徴は先程お話ししましたので、ここでは実際の操作方法をお話しします。

①コマンドの開始
コマンド待ちの状態で、MM+Enter又は右クリックでコマンド開始です。

「M」一文字は移動コマンドで使っている為ここでは「MM」としていますが、好みによって「MT」とかでも構いません。ただし二文字の短縮コマンドならば、絶対に同じ文字の方が早いです。そのあたりも考えて「MM」としています。



②範囲の指定
コマンドを開始すると、現在の文字スタイルと高さが表示され、マルチテキスト範囲の指定待ち表示が出ます。具体的には以下の通りです。

現在の文字スタイル: “Standard” 文字高さ: 2.5
最初のコーナーを指定:

ここでは指示の通り、画面上でマルチテキストの範囲を決めるために画面上をクリックしましょう。そうすると次の点を指定するように表示が出ます。

もう一方のコーナーを指定 または [高さ(H)/位置合わせ(J)/行間隔(L)/回転角度(R)/文字スタイル(S)/幅(W)]:
上記の通り、この段階で「H」などを入力すれば高さ等が設定できます。設定が完了したら、マルチテキスト範囲のもう一点を画面上で指定します。

ここでピックした2点を対角点とした四角形が、マルチテキストの範囲となります。この点は後でも変更が出来ますから、とりあえずは適当でも構いません。

③テキストエディタの起動
2点を指定するとテキストエディタが起動して、文字の入力待ち画面が出てきます。ここで入力したい文字をキーボードから記入します。

先程お話ししたように、色を変えたりアンダーラインを引いたりするのもこのエディタで行います。このあたりは一般的なワープロとそれほど変わりませんので、詳しい説明はやめておきます。

④テキストの確定
文字入力と文字装飾が終わったら、テキストエディタ内の「閉じる」ボタンを押して入力を確定させます。

一般のテキストとは違い「Enter」を押しても改行されるだけで、テキストエディタは終了しませんので注意が必要です。なのでマウスで「閉じる」をクリックです。

マルチテキストのコマンド操作は以上です。これで画面上に入力した文字が表示されるはずですから、あとは一般のテキストなどと同じく移動や複写や文字編集が可能になります。

コマンドの特徴、そして操作方法は以上で終わりです。次回はマルチテキストの使い道について考えてみたいと思います。