前回お話しした通り、今回からは文字関連のトラブルとその対処法についてお話をしていきたいと思います。
まず最初に、MIRROR(鏡像)コマンドを使用する際に必ず発生する問題について考えてみます。

■MIRROR(鏡像)コマンドの概要

MIRROR(鏡像)コマンドは「鏡像」というコマンド名が示す通り、鏡に映したようにオブジェクトを移動・複写することが出来るコマンドです。反転複写・反転移動と呼んだ方がわかりやすいかも知れませんね。

別の項目で詳しくお話ししていますので操作方法はここでお話ししませんが、有効な利用方法はこんな感じになります。

①まず、作図対象がシンメトリー(左右対称)である場合、MIRRORコマンドを使うことを考えて、半分だけ作図をします。こういうのは作図前の作戦が大事です。

②次に、作図した半分に間違いがないかをじっくりとチェックをします。これは意外と重要なポイントです。

なぜ完成していないのにチェックをするのかというと、間違ったものをコピーしてしまうと、後でコピーしたものを全て修正をしなければならなくなるからです。

これはよくやってしまう失敗ですので注意が必要です。私もいまだにやらかしますが、かなり空しい修正です。

③最後に、MIRRORコマンドを利用して残り半分を一瞬で仕上げてしまいます。オートキャド(AutoCAD)の便利さを身にしみる瞬間ですね。

このMIRRORコマンドは使い勝手が良く、私も頻繁に利用するのですが、コマンドの特徴である「鏡に映したようにコピー」というのがここでは問題になってきます。

具体的にはどういう事かというと、文字をMIRRORコマンドで編集した場合、特になにも設定をしていなければ、本当に文字が鏡で映したように反転してしまう、ということです。

要するに「読めない文字になってしまう」ということです。このあたりが「オートキャド(AutoCAD)って頭が固いな」と思ってしまうところですよね。

■どうすれば直せるか

まさか図面を提出する際に「MIRRORコマンドを使ったので文字が反転していますので、後はよろしくお願いします」などとは言えません。

まあ言おうと思えば言えますが、仕事的には恐らくそれっきりになると思います。あまり現実的な選択肢ではありません。

なので、もし文字が反転してしまっていたら、当然修正しなければなりません。これにはプロパティ管理機能を利用するのが早いかと思います。

具体的な方法としては、修正したい文字を選択して「前後を逆」項目を「いいえ」にするという方法です。

…ただし。これをやると、文字の基準点によっては文字が変な場所に移動されてしまいます。どんな状況になるかは一度試してみるとよく分かりますが、しばらく呆然とするような状況です。

これをさらに修正するのは、かなり地道な作業になります。要するにひとつずつ文字の位置を確認・調整していく、ということです。

地道でしかも時間がかかり、さらには修正モレが出やすい作業です。こんな作業はやらない方がマシです。

■システム変数:MIRRTEXT

このサイトをみて「効率よくオートキャド(AutoCAD)で作図をしよう」と考えている方には、そんな非効率的な作業はして欲しくありません。

使用する度に文字位置の調整が必要なコマンドなど、実際の仕事ではあまり役に立ちませんから。

MIRRORコマンドを有効に使いこなす為には、やはり事前に設定をしておく必要があります。ということで、ここでシステム変数をひとつ紹介します。

システム変数「MIRRTEXT」は、先程からお話ししてきたMIRRORコマンドでの文字の表示結果をコントロールします。要するに鏡像表示するかしないか、ということですね。

具体的な設定の流れはこんな感じになります。

①コマンド待ちの状態で「MIRRTEXT」とコマンド入力します。

②そうすると以下のような表示が出ます。
MIRRTEXT の新しい値を入力 <1>:

<1>とありますから、現在の設定は1ということです。ここで、設定したい表示方法に対応した数字を入力してEnterを押します。

0:文字の鏡像表示はしない
1:文字の鏡像表示をする

③設定は以上で完了です。

なぜ初期設定がほとんど使用しないと思われる「鏡像表示をする」なのかはちょっと疑問ですが、初期設定なんてそんなモノです。

いつものことですが、もう少し考えて初期値を決めて欲しいなと思ってしまいます。

余談ですが、昔使っていた設備専用のCADでは、こんな設定自体がありませんでした。
だって、鏡像文字を表示したい場面って全くないですから、そんな設定自体が不要なんですよね。

■注意すること

ここで気をつけなければならない点をひとつ。

システム変数「MIRRTEXT」によって鏡像文字になってしまう問題が解決する訳ですが、ブロックに含まれる文字には効果がありません。

ブロックというのは、複数のオブジェクトをひとつのオブジェクトとして扱うという趣旨のコマンドです。

そのコマンドの性質上、ブロック内オブジェクトの位置関係は不変になります。つまり、完全にひとつのカタマリになる、ということです。

MIRRORコマンドをブロックに対して使用すると、システム変数「MIRRTEXT」の設定にかかわらず、文字は必ず鏡像表示になります。

なので、ブロックを作成する際には、出来るだけ文字を含まないようにした方が無難でしょう。

あるいは、ブロックにはMIRRORコマンドを使用しないようにするか、そのどちらかになります。これは意外とやってしまう失敗ですから、ぜひともここで覚えておきましょう。