直交モードのお話は以前にしましたが、直交以外の角度でも角度を指定して線を引きたい場合があると思います。

読んで頂いた方の中から「角度を指定して線を引くにはどうしたらいいでしょう」という質問のメールを頂きました(感謝!)ので、今回はそれに答える形にします。

まず、角度を指定して線を引く方法ですが、段階に応じていくつか方法があります。この「段階」というのは、何本くらい線を引くのか、ということです。

たくさんの線を引く間ずっと角度を決めたいのか、それとも一本の線を引く時だけ角度を決めたいのか。これによってやはり選ぶ手段は違ってきます。

ただ、手段は違っても、結局はどちらも知識としては知っておいた方が有利ですから、2回に分けて両方の手段についてお話をしたいと思います。

今回は、たくさんの線を引く場合に有効な手段についてです。

■極トラッキング

極トラッキング…多分「きょく」と読むのだと思います。ヘルプによると以下のような解説が出ています。
ユーザ指定の極角度で定義した一時的な位置合わせパスを表示する、精密な作図ツール。

うーん…マニュアルなので仕方がありませんが、どうしてこんなに難しい表現なんでしょうね。

要するに、自分の決めた任意の角度で線が引けたり移動が出来たりする、ということです。直交モードとはまたひと味違った機能ですね。

設定方法は以下の通りです。

①設定画面の呼び出し
今回はステータスバーを利用します。ステータスバーとは、オートキャド(AutoCAD)のウィンドウ最下部にある「スナップ」とか「グリッド」とか書いてある部分の事です。見つかりました?

ステータスバーには、先程も言いましたが「スナップ」「グリッド」「直交モード」など色々な文字が書かれています。

実は(というと大げさですが)この文字はボタンになっていて、押すたびにオンとオフが切り替わってくれます。私はあくまでもキーボードで切り替えるので、ステータスバーはあまり使っていないのですが…。

そのステータスバーの中に「極」というボタンがあるので、ボタンの上で右クリックをします。左クリックだとオンとオフが切り替わりますが、今回の目的はそうじゃありません。

右クリックをすると別にメニューがべろっと出てきますが、今回はその中から「設定」をクリックします。

②角度の設定
そうすると作図補助設定というダイアログボックスが出てきます。極トラッキングの設定はこの中で全て行うことになります。

…と言っても設定項目は非常に少ないですが。

まずは角度を設定しましょう。ダイアログボックス左側の「角度の増分」の中から設定したい角度を決めます。ここで決めた角度を最小単位として、角度補正がかかります。

選べる角度は全部で8種類です。先程は「自分の決めた任意の角度で線を引ける」と言いましたが、実際にはある程度角度が決められているんですね。

でも、図面を描くにあたっては、その8種類で十分です。あまりにも変な角度というのは、作図する為には全然必要ありませんから。

8種類の内訳は以下の通りです。90度・45度・30度・22.5度・18度・15度・10度・5度、以上です。

勘の良い方ならすぐわかると思いますが、全ての角度が90度を分割した数字になっています。2分割=45度、3分割=30度、4分割=22.5度…という具合ですね。

つまり、どの角度を選んだとしても、90度・180度・270度・360度(0度)は通る、ということです。あとはその中をいくつ分割するかだけです。

③任意の角度を追加

②で角度を設定しましたが、自分の描きたい角度が選択肢の中にない場合はこちらで追加することも出来ます。
例えば、どうしても7度の線を描きたい、というような場合です。…あまりなさそうな状況ではありますが。

その場合「角度の増分」の下にある「追加角度を使用」項目をピックし、右側にある「追加」ボタンを押すことで、本当に任意の角度を設定することが出来ます。

ただし、ここで入力した角度は「角度の増分」で設定した角度とは違い、本当にその角度しか補正されません。

例えば「角度の増分」で18度を選択した場合、18度・36度・54度…という具合に18度単位で補正が入ります。最小単位とはそういう意味です。

一方、「追加角度」で7度を追加した場合は、本当に7度しか補正されず、14度は補正されません。もし追加角度を利用するのなら、そのあたりの特徴を覚えておきましょう。

④絶対か相対か
最後に、どの角度を基準にするかを設定します。選択肢は絶対座標と相対座標とがありますが、違いは単純です。

・絶対座標
画面上の0度が絶対に0度、という設定です。
・相対座標
最後に引いた線の角度を0度とみなす、という設定です。

イマイチよく分からない、と思ったら絶対座標にしておくのが無難です。相対座標に関しては、よほどのことがない限り使わないだろうと思います。私は一度も使ったことがないです。

また、絶対座標に関しては、現在のUCSを基準にして0度が決められる、という説明が本来ならば正解です。

でも今の段階では、まだUCSについてお話しするべきではないと考えています。なので、あえて単純な説明とすることにしました。

■使い心地は良いのか

極トラッキングについては以上で終わりです。あとは実際にやってみることが大事ですから、ぜひ試してみてくださいね。

ただ、私の個人的な感想を言わせて頂くと、極トラッキングはイマイチ使いにくい機能かなと。ここまで説明しておいて「何で」という感じですが、正直なところそう思っています。

やってみれば分かるのですが、完全に角度補正をしてくれる訳ではなく、その角度の近くまでカーソルを持っていかないと補正してくれないんです。

なので、ある程度は目で見て「30度ってこのくらいかな…」と考えながらカーソルを操作する必要があるんです。油断するとすぐに補正が解除されます。

これが直交モードと違う点です。どうせなら直交モードのように完全に補正してしまえば良いのにと思うのですが、現実はそうなっていないので仕方がありません。

また、機能の性質上、直交モードと併用して使うことは出来ません。極トラッキングをオンにすると自動的に直交モードが解除されますし、逆の場合も同様です。

これは機能を考えると当然の事ですね。

もし極トラッキングを使う機会があったら、以上のような特徴があることを頭に入れつつ、上手く活用してみてくださいね。

また、角度を指定した線を一本だけ引きたい場合にも極トラッキングは使用できますが、少々大げさすぎる感じです。なので、もう少し手軽に出来る方法を次回はお話ししたいと思います。